急性期理学療法コース

コースの概要

本コースは,高度専門職業人プログラムの内の1つであり,レジデント(研修療法士)制度を有する急性期病院に勤務しながら,本学大学院(修士課程に)に所属することで,急性期理学療法における基礎知識・技術を学び,急性期で理学療法業務を遂行できる能力を育成すると共に,大学院の修士課程にも在籍しならが研究の基礎を学修することができます.
医学は常に進歩を続けているため,理学療法士にも新たな知識や技術の習得が求められます.医師には既に確立された研修医制度がありますが,理学療法士の研修制度は確立されていないという問題点があります.理学療法士にもレジデント制度を導入することで,統一された教育の規格を確立し,より質の高い教育プログラムを提供することが可能になります.
現在は,全国に複数あるレジデント制度を有する施設のうち,神戸市立医療センター中央市民病院,小田原市立病院,獨協医科大学日光医療センターの3施設との間で協定を結び,本コースを進めています.
発症や受傷後の早期から理学療法介入を行うことで,機能回復を促進し患者様の入院期間を短縮することができることから,急性期理学療法の需要は年々高まっています.一方で,この領域に関わる理学療法士はまだまだ少なく,人材不足が懸念されています.また,理学療法士で大学院進学をする割合は低く,本コースを修了することで全国的にも希少な理学療法士として,活躍の土台を作ることができます.修了後に大学院の博士後期課程に進学することも可能です.
本コースでは,このような社会からのニーズにも対応でき,幅広い分野で活躍できる理学療法士を育成していきます.

履修要件,カリキュラム構成

修了には,フルタイムの大学院と同じ30単位以上の習得が必要です.オンラインで履修できる科目が多いことから,県外に居住していても履修することができます.フルタイムと大きく異なるのは,急性期理学療法実習IおよびIIにおいて,自身の勤務する病院で実習を行うことができる点です.

カリキュラム

授業風景,実習風景,ミーティング風景など

3施設いずれも新潟県外にあることから,大学院の授業やゼミでの研究報告などは,すべてオンラインで実施しています.研修制度における卒後研修としては,他の職種を含めた院内研修に参加したり,部門内での勉強会に参加したり,2年間で基礎的な知識や技術を習得します.また医師の回診に同行し,理学療法の目標やその日の治療内容などを,カルテや検査結果などの情報を多職種で確認しながら説明するなど,アウトプットする機会も多く持つことができます.
急性期理学療法学実習では,院内の先輩理学療法士や大学院指導教員によるOn the job trainingの機会も多く,実践力を身につけるための体制も充実しています.

オンラインでの研究報告の様子.本コースの院生,職場の指導的立場の理学療法士,大学院指導教員とともにディスカッションします.

回診に同行し,理学療法の進捗や目標などを他の職種に説明することで,積極的な情報共有ができています.

病棟専従の理学療法士の指導をその場で受けることで,より実践的な技術の習得ができます.

施設紹介

  • 神戸市立医療センター中央市民病院

神戸市立医療センター中央市民病院は,768床の病床,30を超える診療科を有する神戸市域の基幹病院です.2023年3月に厚生労働省から発表された「救命救急センターの評価結果(令和4年)について」において,神戸市立医療センター中央市民病院の救命救急センターが,全国300の施設中,第1位の評価を獲得しています.これにより,2014年度から続く「救命救急センター全国第1位」の評価を9年連続で受けており,急性期理学療法を学ぶ上では,日本でも有数の環境にあります.
回復期病院や訪問リハビリテーションに同行する機会もあり,急性期病院を退院したあとの経過なども確認することができ,急性期での理学療法に還元することができます.
研究面でも,スタッフに大学院修了者が複数いることに加え,研究支援のスタッフもおり,相談しやすい環境ができています.

神戸市立医療センター中央市民病院の外観

神戸市立医療センター中央市民病院の急性期理学療法コース2022年度入学生
(左:高橋さん,中央:倉島さん,右:佐々木さん)

  • 小田原市立病院

小田原市立病院は, 417床,26の診療科数を有する県西二次保健医療圏域の基幹病院です.また,災害拠点病院,基幹型臨床研修病院,地域周産期母子医療センター,地域がん診療連携拠点病院のほか,救命救急センター,地域医療支援病院など,多くの機能を担っています.小田原市立病院は急性期の総合病院であるため,回復期や維持期の理学療法に関わる機会がありませんが,外部研修制度として回復期リハビリテーション病院,整形外科クリニック等へ短期研修制度も用意することで,幅広い領域の理学療法を経験することができます.さらに,小田原市立病院では,大学院修士課程を修了しているスタッフが複数在籍しているため.病院での臨床研究のフォロー体制等も充実しています.

小田原市立病院の外観

小田原市立病院の急性期理学療法コース2022年度入学生
(左:佐藤さん,右:内山さん)

  • 獨協医科大学日光医療センター

獨協医科大学日光医療センターは,2023年1月に病院を新築移転しており,現在は199床,21の診療科を有する国際観光都市日光の基幹病院です.医科大学付属病院としての特性を生かして,最新の医学技術と最先端の医療機器を備え,中規模病院の小回りの良さを利用して,地域が求める急性期医療と高度医療,そしてリハビリテーションを切れ目なく提供しています.特に地域が求める急性期医療には全力で取り組み,「救急車を断らない病院」として栃木県民,周辺医療機関,そして行政から頼りにされる施設を目指しており,多職種や地域と連携しながら,急性期理学療法を学ぶことができます.
また,獨協医科大学日光医療センターでは,リハビリスタッフの半数近くが修士号を取得している実績があるため,手厚いフォローを受けることができます.また,患者様のデータを利用した臨床研究だけでなく,大学病院ならではの動物データを使用した基礎研究にも取り組んでいます.

獨協医科大学日光医療センターの外観

小田原市立病院の急性期理学療法コース2023年度入学生
(左:渋谷さん,右:久住さん)

急性期理学療法コース修了生からのメッセージ

私は大学卒業と同時に本コースへ進学しました。
本コースでは、目まぐるしくも充実した環境である急性期病院での早期リハビリテーションの経験を積み重ねることができます。さらにそこで生じた疑問に対して自ら研究を行い、その疑問を明らかにする力を身につけることができます。これは意識的に臨床的かつ学術的な観点を両方もつことで、自己研鑽のみならず患者様へのニーズをより実現できる可能性を広げることに近づくと実感しております。
私自身、現在も神戸市立医療センター中央市民病院にて臨床業務に励みつつ、本コースに進学した後輩のサポートを行っております。臨床業務と研究の両立は決して簡単ではありませんが、充実した2年間になることは間違いありません。ともに高め合いましょう!

神戸市立医療センター中央市民病院 稻垣優太さん

進路先 神戸市立医療センター
中央市民病院
小田原市立病院 獨協医科大学
日光医療センター
自施設への就職 4 1
急性期病院 2 1
回復期病院 0
慢性期病院 0
総合病院 1
クリニック 1
訪問リハビリ 2
その他 1
合計 11 2

※小田原市立病院,獨協医科大学日光医療センターは,本コースを開始しての期間が短いため,修了生が少ないか,まだ修了生が出ていません.