須貝菜央さん(修士課程2年,保健学専攻,運動機能医科学研究所)と平林怜講師(理学療法学科,スポーツ医科学Lab,運動機能医科学研究所,アスリートサポート研究センター)の研究論文が,国際誌『Functional Morphology and Kinesiology』に採択されました!
【研究概要】
咬合はあらゆるスポーツ活動中に確認されています.歯を噛みしめることで歯根膜の受容体から脊髄を介して,四肢や体幹に遠隔促通効果が生じることが知られています.本研究はマットスイッチや筋電図を用いて,咬合による筋反応時間や単純反応時間への影響を検証しました.咬合強度が高いほど,遠隔促通効果が優位に働き,筋反応時間や単純反応時間が短縮したことから,咬合は,陸上や水泳などの単純反応を必要とするスポーツに対して良い効果をもたらす可能性を明らかにしました.本研究の成果は国際誌『Functional Morphology and Kinesiology』に掲載されます.
【研究者からのコメント】
咬合は簡単に脊髄機能の変調を生じさせ,即時的に筋発揮能力を向上することができます.しかし,スポーツ現場では咬合に関する指導はされておらず,歯を保護する目的でのマウスピースのみが指導されています.本研究は,咬合が単純反応時間を向上させることが明らかとなったため,陸上や水泳などの単純反応を要する競技に対するパフォーマンスの向上の一助となる知見となりました.
今後の研究としては,咬合をすることはスポーツパフォーマンスに良い影響を与えますが,左右の咬合不均衡は遠隔促通効果にアンバランスな影響を及ぼすことから,スポーツパフォーマンスの低下を生じさせる可能性があります.今後は,咬合の不均衡が全身の反応時間にどのような影響を与えるのかを明らかにし,咬合状態が運動パフォーマンスに与える影響や運動パフォーマンス向上の観点からのマウスピースの重要性を明らかにできるような研究を進めていきたいと思います.
【本研究のポイント】
離地時間と接地時間は,噛みしめない条件(No-bite条件)と比較して最大努力の咬合条件(Max条件)において反応時間が短縮することが明らかとなりました.
適度に噛みしめる咬合条件(Moderate条件)内の咬合強度の違いがNo-bite条件からModerate条件への反応時間の変化率を示しています.ヒラメ筋(Sol)反応時間と接地時間が咬合強度が高い人ほど反応時間の短縮が生じたことが明らかになりました.
原著論文情報
Sugai N, Hirabayashi R, Okada Y, Yoshida Y, Okouchi T, Yokoya H, Ishigaki T, Komiya M, Edama M. Effects of Clenching Strength on Step Reaction Time. Functional Morphology and Kinesiology[in press]