齊藤慧講師(理学療法学科,神経生理Lab,運動機能医科学研究所),立石魁人さん(理学療法学科18期生,寺尾整形外科クリニック)と紅林竜司さん(理学療法学科18期生,熱海所記念病院)の研究論文が国際誌「Frontiers in Neuroscience」に採択されました!
【研究概要】
ヒトは手指で物体に触れることで,その形状や固さなどを識別することができます.さらに,手指で触れた物体の形状などを識別する能力はトレーニングによって高めることが可能です.しかし,トレーニング効果には個人差があり,個人差が生じるメカニズムは十分に解明されていませんでした.本研究は触覚機能へのトレーニング効果が高い群と低い群でトレーニングによって生じる神経ネットワークの変化を検証しました。本研究結果より,トレーニング効果が高い群では触覚情報を処理する皮質領域である一次体性感覚野と前頭葉領域の神経ネットワーク(α帯域:8-13Hz)がトレーニング後に増大しますが,トレーニング効果が低い群では神経ネットワークの変化が生じないことが明らかになりました.
【研究者からのコメント】
触覚機能へのトレーニングの効果に個人差が生じる原因について,これまで未解明な部分が多くありました.本研究では,そのメカニズムの一端を明らかにしました.今後,触覚機能へのトレーニング効果を最大限に引き出す方法を追求することで,リハビリテーションの現場で活用できるようになることが期待できます.
【研究のポイント】
1)触覚の知覚学習効果が得られやすい群(A)と得られにくい群(B)に分けられることが明らかになりました.
2)知覚学習が得られやすい群では触覚方位弁別を用いたトレーニング後に一次体性感覚野と前頭葉領域のα帯域(8-13Hz)の神経ネットワークが高まることが明らかになりました(A).一方,知覚学習効果が得られにい群ではトレーニングによる神経ネットワークの変化は生じないことが明らかになりました(B).
原著論文情報
Saito K, Otsuru N, Tateishi K, Kurebayashi R, Onishi H. Differential modulation of the cortical alpha rhythm and activation of distinct neural networks during tactile perception training by learners and non-learners. Frontiers in Neuroscience, 2025; 19:1566615 https://doi.org/10.3389/fnins.2025.1566615