足関節に存在する前距腓靭帯の上部線維束と下部線維束の制動機能の違いを明らかにしました!

関井優斗さん(理学療法学科21期生、飯能整形外科病院)と江玉睦明教授(理学療法学科、スポーツ医科学Lab、アスリートサポート研究センター、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌に掲載されました!

【研究の概要】

この研究では、足首のねんざによく関係する「前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)」という靭帯について調べました。この靭帯は、足首の外側にあって、足がグラグラしないように支えてくれています。前距腓靭帯には、上の部分(上部線維束)と下の部分(下部線維束)があります。しかし、この2つがどんなふうに足首を守っているのか、はっきりとはわかっていませんでした。そこで我々の研究チームは、特別な保存方法(Thiel法)で保存された献体を使用して、以下のような実験をしました.

実験内容:足首の動きやすさを調べる装置(Telos装置)を使って、靭帯がどれくらい足を支えているかを調べました。足をいろいろな角度(まっすぐ・少し下に曲げる・もっと下に曲げる)にして、前に引っぱったり、内側にねじったりする力を加えました。そのときに、靭帯の上の部分か下の部分を切って、足首の骨の間の広がり方を超音波で測りました。

結果:足を30度くらい下に曲げたときには、上の部分でも下の部分でも、靭帯を切ると骨の間が広がってしまうことがわかりました。つまり、どちらの部分も足が前にグラグラ動かないように支えていると考えられます。また、足をまっすぐにした状態で内側にねじるときには、下の部分の靭帯が特に重要そうだということもわかりました。

結論:この研究から、前距腓靭帯の上の部分も下の部分も、足首を安定させるのに大事だということがわかりました。特に、足の角度によって、どの部分が頑張っているかが少しずつ違うようです。このような知識は、足首のけがの予防やリハビリに役立つ可能性があります。

 

   

【研究者からのコメント】

この研究を通して、足首の靭帯が思っていた以上に繊細で、角度によって役割が変わることを実感しました。特に、教科書で見ていた“前距腓靭帯”を実際に動かして、計測していく過程はとても興味深く、印象に残っています。実験では、データを集めたり、測定装置や超音波画像装置の操作を覚えたりと、初めてのことばかりで苦労も多かったですが、その分、結果が出たときの達成感は大きかったです。今回の研究成果が、足首のけがの予防やリハビリに少しでも役立つことを願っています。将来は、こうした基礎研究の知見を、現場での治療やサポートに活かせるような専門職になりたいと思っています。

 
  
原著論文情報
  

Mutsuaki Edama, Yuto Sekii, Kodai Sakamoto, Tomonobu Ishigaki, Hirotake Yokota, Ryo Hirabayashi, Makoto Komiya, Chie Sekine, Tomoya Takabayashi, Noboru Sato. Differences in ankle stabilizing function between the upper and lower fiber bundles of the anterior talofibular ligament: an anatomical study. Sci Rep. 2025 Jul 18;15(1):26126. doi: 10.1038/s41598-025-11747-8.