★ 脳由来神経栄養因子の遺伝子タイプは、運動スキルに影響を及ぼすのか?—システマティックレビューとメタ解析—(2021.12.11)

日本学術振興会海外特別研究員として,The University of Adelaide(生理学教室)に留学中の佐々木亮樹さん(理学療法学科11期生,大学院博士後期課程2018年度修了,運動機能医科学研究所)の研究論文が『Behavioral Brain Research』に掲載されました!!

研究内容の概要

個々の持つ運動スキルには、大きな個人差が存在するのが周知の事実ですが、その要因の一部に脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子型(Val/Val, Val/Met, Met/Met型)が関与する可能性が報告されています。しかし、先行研究ではVal/Val型で運動スキルが優れていること、またはVal/MetとMet/Metを含むMet型で優れていることなどが報告されており、一致した見解が得られておりませんでした。そこで本レビューでは、運動スキルにおけるBDNF遺伝子型の影響を調査した先行研究を対象として、その影響を包括的に調査しました。その結果、メタ解析にてBDNF遺伝子タイプ間では、運動スキルに有意差がないことが示されました(standardized mean differences = 0.08, P = 0.37; I2 = 0)。このことから、BDNF遺伝子タイプは、個々の運動スキルに大きく関与しないことがメタ解析にて明らかになりました。

佐々木さんからのコメント:

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運動スキルは、日常生活上にて頻繁に要求されますが、ご存じの通り大きな個人差があります。すなわち、ある種の運動に対して上手な人、下手な人が存在します。この要因には様々なものが複合的に関与すると考えられておりますが、決定的な要因は明らかになっておりません。そこで本研究では、出版された先行研究を対象として、BDNF遺伝子型は運動スキルに影響を及ぼすのか否かを明らかにすることとしました。

本研究成果のポイント:

① PubMedおよびWeb of Sciencesにて、検索キーワードを入力して3,771の先行研究が見つかりました。その後、スクリーニングによって19の関連する論文が最終的に採用されました。

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1. PRISMAフローチャート。

本チャートは、関連論文の検索からスクリーニングまでの過程を示している。

② 各文献から各遺伝子型に分けられた運動スキルの値を抽出しましたが、その全体平均値はVal/Val型とMet carriersで大きな差はありませんでした。

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2. 各文献から得られた遺伝子タイプにおける運動スキルの平均値。

③ メタ解析の結果、遺伝子間で運動スキルに有意差がないことが示されました。

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3. 遺伝子タイプが運動スキルに及ぼす影響を調査したForest plot

 
  
原著論文情報
  

Sasaki R, Miyaguchi S, Onishi H. Effect of brain-derived neurotrophic factor gene polymorphisms on motor performance and motor learning: A systematic review and meta-analysis. Behavioral Brain Research . In press.