★ 片側でのフォームローリング介入は反対側でも関節の可動域を同じ程度,増加させることを明らかに!!(2021.06.26)

清野涼介さん(伊藤超短波株式会社,理学療法学科15期生,修士課程修了,応用理学療法Lab)と中村雅俊先生(理学療法学科,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所)が行った研究論文が,国際誌『Frontiers in Physiology』に採択されました!!

今回の研究では,スポーツ現場で用いられることが増えてきたフォームローリングが関節の柔軟性に及ぼす影響について,「クロスエデュケーション」効果について検討しました.クロスエデュケーション効果というのは,先日紹介した報告(https://www.nuhw-pt.jp/2021/06/-20210621.html)にもありますが片側にトレーニングやストレッチングを行ったときに,何も行ってない反対側に良い効果が波及することを指します.今回の研究では,片側にフォームローリングを行うことで行った側の関節の可動域が増加するだけではなく,反対側にも同程度の関節の可動域の増加効果が期待できることがわかりました.

無料で読める論文ですので興味があればお読みください☺→https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2021.702042/full

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コロナ禍の中,実験を中心的に頑張ってくれた清野さん

研究の概要

最近,スポーツ選手のセルフケアグッズとして下に示すようなローラー状のセルフケアグッズの使用する人が増えています.期待される効果としては,関節の柔軟性や筋肉の硬さの改善,筋肉痛の予防や疲労回復などが考えられます.我々の研究グループではこれまで形状は違いますすが,フォームローリングをすることで関節の柔軟性が増加することを証明しております(Nakamura et al., 2021, Kiyono et al., 2020).今回は,その研究を発展させる内容ですが,面白いことにローリングを行っている側で関節の柔軟性が増加することは多く知られていますが,ローリングを行っていない側でも関節の柔軟性が増加する「クロスエデュケーション効果」というものがある可能性が示されていました.しかし,その効果についてはまだまだ分かっていることが少なかったため,今回,研究として行いました.今回の研究では,下の図にあるローラーマッサージというものを利き足側に行い,利き足側の関節や筋の柔軟性,痛みに対する感じ方,脊髄興奮性を測定するだけではなく,同じ測定項目を反対側でも行いました.

その結果,関節の柔軟性はローリングしている側とローリングしてない側で増加し,その効果は同じぐらいでした.また,この関節の柔軟性の変化に関しては筋肉の柔軟性や脊髄の興奮性の変化ではなく,痛みに関する感じ方が関連していることが分かりました.

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中村先生からのコメント

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フォームローリングはスポーツ選手に使用されることが増えてきたセルフケアグッズでありますが,その効果についてはあまり知られていませんでした.今回は,ローリングしている側だけではなく,ローリングをしてない側での効果を研究しました.実際には両側ともにローリングすることもできる場合は両側ともローリングするほうが良いと思いますが,何かの事情でローリングできない場合,片側だけでもローリングすることで結果が出せる可能性があります.今後はリハビリテーションが必要とされる患者さんや高齢者においても効果の検討をしていきたいと思います.

 
  
原著論文情報
  

Nakamura M, Konrad A, Kiyono R, Sato S, Yahata K, Yoshida R, Yasaka K, Murakami Y, Sanuki F, Wilke J. Local and Non-local Effects of Foam Rolling on Passive Soft Tissue Properties and Spinal Excitability. Front. Physiol., 25 June 2021 | https://doi.org/10.3389/fphys.2021.702042