★ 一次運動野と小脳への交流電流刺激により運動学習の保持が向上することを発見!!(2020.05.06)

宮口翔太助教(理学療法学科,運動機能医科学研究所)と松本侑也さん(理学療法学科16期生,横浜なみきリハビリテーション病院勤務)の研究論文が,国際誌『Journal of Clinical Neuroscience』に採択されました!運動学習に関する研究で,特定の刺激方法を行うことで運動学習の保持能力が上がるという研究です!詳しい内容は以下をご覧ください.

研究内容の概要:

 ヒトが円滑に運動を遂行する際には,一次運動野と小脳の神経ネットワークが重要となります.我々はこれまで,大脳皮質の神経ネットワークを変調することのできる非侵襲的脳刺激法である経頭蓋交流電流刺激をもちいて一次運動野と小脳をガンマ帯域の周波数で同時刺激することによって,手指の運動パフォーマンスを向上することを明らかにしてきました.本研究では,この刺激方法を運動学習課題中に施行することによって学習を促進することが出来るかどうかを検証しました.その結果,刺激を行った群においては学習翌日における運動スキルの保持が向上することが明らかになりました.本研究成果は、国際誌『Journal of Clinical Neuroscience』に掲載予定です.

宮口先生からのコメント:

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宮口先生(左)と松本さん(理学療法学科16期生)

 本研究では,運動学習に関与する2つの領域に対して経頭蓋交流電流刺激を施行することによって運動学習の保持が向上することを明らかにしました.しかしながら,その効果には未だ改善の余地があると考えております.今後は,運動学習に関与する複数領域の神経ネットワークをより詳細に明らかにし,一人一人の脳活動やパフォーマンスレベルに合わせた効率的な運動学習方法の考案や,効果的なリハビリテーションプログラムの考案につなげたいと考えています.

本研究のポイント:

① 運動学習課題として左示指の視覚追従課題(指の力を精密にコントロールする課題)を実施し,運動課題のエラー値を解析しました.

Figure1.jpg② 一次運動野と小脳を同時刺激しながら視覚追従課題を練習するγ-tACS条件と刺激せずに練習する疑似刺激条件の2条件を用いて運動学習効率および運動学習の保持を比較しました.図では,γ-tACS条件において練習日の翌日の1回目におけるエラー値が疑似刺激条件よりも小さい(より学習が保持されている)ことを示しております.

Figure 2.jpg③ 2条件における運動学習効率と運動学習の保持,再学習効率を比較した結果,γ-tACS条件の方が疑似刺激条件よりも運動学習の保持が有意に高い値を示しました(p<0.05).

Figure 3.jpg

 
  
原著論文情報
  

Shota Miyaguchi, Yasuto Inukai, Yuya Matsumoto, Mai Miyashita, Ryo Takahashi, Naofumi Otsuru, Hideaki Onishi. Effects on motor learning of transcranial alternating current stimulation applied over the primary motor cortex and cerebellar hemisphere. Journal of Clinical Neuroscience (2020).