2025年10月より理学療法学科の助教に着任いたしました小島将と申します．本学理学療法学科を2018年に卒業後，本学の修士課程にフルタイム大学院生として進学，2020年より東京都内の一般病院で臨床勤務をしながら博士後期課程を修了し，現在に至ります．
これまで健常者や末期腎不全患者を対象に運動時の脳微小循環の変化や体組成と身体機能，生命予後との関係について研究を行ってきました。
研究紹介
1）運動強度の増加に伴う脳の微小血管血流変化と領域的差異
運動は全身の循環動態を変化させ，継続的に取り組むことで心肺機能や血管機能を改善させることがわかっています．しかしながら，運動が脳の微小血管機能や血流に与える影響は，いまだ不明な点が多いままです．運動強度が徐々に上がる漸増負荷運動時に認知機能に関連する前頭前野や運動に関連する領域の血流変化を同時に計測し，どちらの脳領域でも血流増加が生じますが，特に右の前頭前野で増加が早いことを明らかにしました．
2）透析中に行う中強度運動が局所脳酸素飽和度に与える影響
末期腎不全で透析を導入した患者は，透析中に脳の血流低下が生じることがわかっており，これが認知機能低下に関連することが報告されています．透析中に運動を行うことで血流低下を相殺できるのではないかと考え，透析中の中強度運動によって脳の微小血管血流は増加し，前頭前野の局所脳酸素飽和度が改善することを明らかにしました．
3）透析患者の体組成と生命予後との関連
一般集団では肥満は死亡リスクの増加に関連し，心不全や透析患者では逆に肥満が死亡リスクの軽減に関連することが知られており，これは肥満パラドックスと呼ばれています．肥満度を示すBMIは，内臓脂肪や皮下脂肪，骨格筋の量を識別できないことから，肥満のリスクを正確には反映していません．腹部CTから皮下脂肪，内臓脂肪，骨格筋量，筋内脂肪の指標を詳細に評価し，皮下脂肪に対する内臓脂肪の割合や筋内脂肪の指標が多いほど死亡リスクが高いことを明らかにしました．
原著論文情報
1) Sho Kojima, Shinichiro Morishita, Kazuki Hotta, Weixiang Qin, Naoto Usui, Atsuhiro Tsubaki. Temporal changes in cortical oxygenation in the motor-related areas and bilateral prefrontal cortex based on exercise intensity and respiratory metabolism during incremental exercise in male subjects: A near-Infrared spectroscopy study. Frontiers in Physiology. August 2022. 13:794473. 2) Sho Kojima, Naoto Usui, Akimi Uehata, Akihito Inatsu, Yasuo Chiba, Hisadome Hideki, Yusuke Suzuki, Junichiro Nakata, Atsuhiro Tsubaki. Acute Effect of Moderate-Intensity Interval Intradialytic Exercise on Cerebral Oxygenation in Hemodialysis Patients: A Randomized Crossover Trial. Journal of the American Society of Nephrology. March 2025. 36(9):1811-1822. 3) Sho Kojima, Naoto Usui, Masato Shigetake, Akimi Uehata, Akihito Inatsu, Shuji Ando, Ryota Matsuzawa, Yusuke Suzuki, Junichiro Nakata, Takahiko Tsuchiya, Hideki Hisadome, Takayuki Mawatari, Atsuhiro Tsubaki. Intramuscular and abdominal fat measured by computed tomography and mortality of hemodialysis patients. Nephrology Dialysis Transplantation. July 2023. 39(2):286-296.
