★小曽根先生のご紹介

2024年4月より理学療法学科の助教に着任いたしました、小曽根海知(おぞねかいち)です。埼玉の養成校を卒業後、埼玉県内の整形外科クリニック、訪問看護ステーションにて勤務しながら大学院へ進学。埼玉での修士前期・後期課程を修了後、茨城の大学病院での臨床活動を経て現在に至ります。
これまではスポーツ障害の好発部位としても知られる”腱骨付着部”を解析対象とし、障害発症機序の解明に向けマウスを用いた基礎研究を実施してきました。

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筋肉で生じたエネルギーは腱を介し、骨に伝達することで関節運動が生じます。この力の適切な伝達と関節運動の滑らかさを誘導するために腱骨付着部(以下Enthesis:エンテーシス)は特徴的な4層構造を有しています(図1)。同部の構造理解と特徴を把握することは、スポーツ障害発症機序に役立ちます。

図1:棘上筋腱骨付着部の組織像

研究紹介:Enthesisにおける形態変化と筋肉の収縮様式の関係性
筋肉の収縮様式には一般的に求心性収縮、等尺性収縮、遠心性収縮があります(図2)。これらの筋収縮の優位性に変化を与えた際、Enthesisに如何なる変化が生じるのかは不明でした。そこでマウスを用いた基礎研究にて、走行角度を変えることで筋肉の収縮様式に変化を与え(図3)、それぞれの運動形式におけるEnthesisでの反応を比較しました。

図2:収縮様式の模式図          図3:運動介入群

結果として、遠心性収縮優位な下坂走行群においてEntehsisでは形態変化を示し、障害発症様の病理学的変化を示していました。また興味深いことに、下坂走行群では走行速度に依存せず同様の病理学的変化を示し、求心性収縮優位な平地走行群では走行速度が速くとも病理学的変化を示すことはありませんでした(図4)。

図4:研究結果の概略図

最近はEnthesisの研究だけでなく、関節リウマチモデルマウスを利用し、活動期関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)に対する運動療法の効果検証も実施しています(図5)。自己免疫疾患に対して新たな運動療法の確立が行えるよう、基礎研究の視点から研究を進めています。

図5:RAモデルマウスの手・足関節

原著論文情報:
・Ozone K, Kokubun T, Kanemura N et al. Structural and pathological changes in the enthesis are influenced by the muscle contraction type during exercise. J Orthop Res. 2022 Sep;40(9):2076-2088. doi: 10.1002/jor.25233.
・Ozone K, Minegishi Y, Kanemura N et al. Eccentric contraction-dominant exercise leads to molecular biological changes in enthesis and enthesopathy-like morphological changes. J Orthop Res. 2023 Mar;41(3):511-523. doi: 10.1002/jor.25399.