歩行中の杖の使用は股関節内・外転モーメントインパルスを減少させる!!(2019.03.24)

大学院博士後期課程2年生の稲井卓真さん(バイオメカニクスLab、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌『Gait & Posture』に掲載されました!!稲井さんはバイオメカニクス的アプローチにより関節(特に股関節などの下半身の関節)にかかる負担についての研究を行っております.今回は,股関節へかかる負担を減らす方法についての研究となっております.詳しい研究内容は以下に説明いたします.

研究概要:

変形性股関節症は高齢女性に頻発する整形外科疾患です。近年、変形性股関節症のリスクファクターのひとつとして股関節累積負荷(股関節内・外転モーメントインパルスと1日の平均歩数との積)が報告されており、この指標を低減させることで変形性股関節症の進行を遅延できる可能性があります。T字杖は変形性股関節症患者に頻繁に使用されるツールですが、歩行中のT字杖(対側)の使用と股関節内・外転モーメントインパルスの関係は不明です。そこで、私たちは歩行中のT字杖の使用が股関節内・外転モーメントインパルスに与える影響を検討しました。その結果、以下に示す知見を得ることができました。

1.T字杖を使用しない時と比べて、T字杖を使用した時では股関節内・外転モーメントインパルスが減少

2.T字杖を床につく荷重量が増大するほど、股関節内・外転モーメントインパルスが減少

稲井さんからのコメント

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本研究の知見は、変形性股関節症の進行を遅延させるための一助となる可能性があると考えています。今後は、杖の他にどのような方法で歩行中の股関節の負荷(股関節内・外転モーメントインパルス)を減少させることができるか解明していきたいと考えています。

研究のポイント:

1.杖の荷重量を3つ設定した点(体重の10%、15%、20%)

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2.ビジュアルモニターを用いて、杖の荷重量をリアルタイムで確認した点

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3.杖による床反力が外的股関節外転モーメントを生み、股関節内・外転モーメントインパルスを減少させた点

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原著論文情報
  

Inai T, Takabayashi T, Edama M, Kubo M: Effect of contralateral cane use on hip moment impulse in the frontal plane during the stance phase. Gait & Posture (in press)