【Topics&News】八坂先生のご紹介(2023.05.08)

生理学(共通教育)担当の八坂敏一と申します。2023年後期より健康栄養学科から理学療法学科に所属が変わりましたので、改めてご挨拶させていただきます。
理学療法学科では、病態生理Lab(旧神経・筋・骨組織Lab)に所属し、脊髄レベルで感覚(主に痛みと痒み)の伝導路について研究しております。
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感覚情報は脳に達する前に脊髄後角で中継されます。従って、脊髄後角は末梢の1次感覚神経が中枢神経系に入る入り口となります。脊髄後角では脳へ投射するニューロンが情報を中継する役割を担っていますが、その数はごくわずかであり、ほとんどのニューロンは介在ニューロンであり、脊髄後角内で局所神経回路を形成し、脊髄で中継される感覚情報を修飾しています。これらの脊髄後角ニューロンを研究対象としています。

研究方法はニューロンについて電気生理学的(パッチクランプ法)、形態学的、神経化学的(免疫組織化学染色)な手法を組み合わせて行っています。脊髄後角のニューロンは多くの種類があり、電気生理学的、形態学的、神経化学的に多様性がありますが、どれか一つのパラメーターでは、機能的な集団を確実に同定することはできません。そのためにこれらのパラメーターを組み合わせて分類しています。分類された集団がそれぞれどのような神経回路を形成しているかを知ることで、異常な痛みや痒みについて理解し、その治療につなげるために研究しています。

パッチクランプ記録は、摘出した脊髄をスライスして行う方法と麻酔下においた動物の脊髄から行う方法があります。記録細胞にどのような線維が入力しているのか、どのような皮膚刺激に応答するのか、どのような神経修飾物質(カテコールアミンや神経ペプチドなど)によって興奮/抑制されるのか、どのようなイオンチャネルが発現しているのか、などを知ることができます。また、記録したニューロンは染色することができ、ニューロンの形態を観察することができます(図中の緑のニューロン)。形態学的な多様性は主に樹状突起がどのように張り出しているかを観察します。神経化学的な解析は脊髄後角ニューロンの様々なマーカーを免疫組織化学法により染色します。図中の青はプロテインキナーゼCγ(PKCγ)を発現しているニューロンを染色しています。パッチクランプ記録した細胞の周辺に丸い細胞体が多く観察できます。また、同様に赤は神経ペプチドY(NPY)を発現しているニューロンを染色しています。こちらはこの写真では小さな点々でしか見ることができません。これはNPY陽性の神経終末部が染まっています。この様な手法を用いて記録細胞の種類や他の種類の神経細胞との関係を調べることができます。

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原著論文情報:
Tashima R, Koga K, Yoshikawa Y, Sekine M, Watanabe M, Tozaki-Saitoh H, Furue H, Yasaka T*, Tsuda M*. A subset of spinal dorsal horn interneurons crucial for gating touch-evoked pain-like behavior. Proceedings of the National Academy of Sciences 118:e2021220118, 2021. doi:10.1073/pnas.2021220118. (*: corresponding author)

Boyle KA, Gradwell MA, Yasaka T, Dickie AC, Polgár E, Ganley RP, Orr DPH, Watanabe M, Abraira VE, Kuehn ED, Zimmermann AL, Ginty DD, Callister RJ, Graham BA, Hughes DI. Defining a spinal microcircuit that gates myelinated afferent input: implications for tactile allodynia. Cell Reports 28:526-540, 2019. doi: 10.1016/j.celrep.2019.06.040.

Yasaka T*, Tiong SYX, Polgár E, Watanabe M, Kumamoto E, Riddell JS, Todd AJ*. A putative relay circuit providing low-threshold mechanoreceptive input to lamina I projection neurons via vertical cells in lamina II of the rat dorsal horn. Molecular Pain 10:3, 2014. doi:10.1186/1744-8069-10-3. (*: corresponding author)

Yasaka T*, Tiong SYX*, Hughes DI, Riddell JS, Todd AJ. Populations of inhibitory and excitatory interneurons in lamina II of the adult rat spinal dorsal horn revealed by a combined electrophysiological and anatomical approach. Pain 151(2):475-488, 2010. doi: 10.1016/j.pain.2010.08.008. (*: equal contribution)

Yasaka T*, Kato G, Furue H, Rashid MH, Sonohata M, Tamae A, Murata Y, Masuko S, Yoshimura M. Cell-type-specific excitatory and inhibitory circuits involving primary afferents in the substantia gelatinosa of the rat spinal dorsal horn in vitro. Journal of Physiology 581 (2): 603-618, 2007. doi: 10.1113/jphysiol.2006.123919. (*: corresponding author)

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