【プチ講座シリーズ①】世界が注目する日本の「フレイル」対策 -高齢化社会での理学療法士への期待-

日本は世界一の「高齢化先進国」!
 さっそくですが,日本の「高齢化率」はどの程度かご存知ですか?「高齢化率」は,総人口に占める65歳以上の高齢者の割合を示し,国や県,市などの高齢化を反映する指標として用いられています.2022年の日本の高齢化率は29.1%であり,日本では3人に1人が高齢者であることが示されています.そして,日本の高齢化率は世界で一番高いことが分かっています(下表).つまり,日本は世界一の「高齢化先進国」なのです.

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高齢化が進むとどうなるか?
日本の高齢化率は今後も加速し,2040年には35%に達すると推定されています.一方で,高齢者を支える現役世代(15-64歳)の人口は減少し続けています.1950年には1人の高齢者を現役世代12.1人で支えていたのに対し,2015年には2.3人,2065年には1.3人まで落ち込むことが推定されています.高齢者が増え続けることで,医療費や介護費は増え続け,やがては社会保障制度を維持することができなり,今の現役世代や子供達は,将来大きな負担を背負わなければならいことが心配されています.

フレイルとは?
 そこで注目されているのが「フレイル」です.フレイルとは,加齢によって身体が衰え,介護が必要となる「一歩手前」を示す新しい用語です.身体が衰える「一歩手前」に早く気づくことで,介護が必要になる前に対策を行い,高齢者が自立した生活を1日でも長く送ることが期待されています(下図).一度介護が必要になってしまうと元に戻るのはとても大変です.「フレイル」には,適切な対応をすることで,元の状態の戻れる可能性があるという意味が込められています.1人でも多くの高齢者が1日でも長く自立した生活を送る「健康長寿」を実現することが,日本の社会保障制度を維持する鍵と考えられています.
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「フレイル」はどのようして分かるの?
 フレイルは,①体重減少,②筋力低下,③疲労感,④歩行速度の低下,⑤身体活動の低下,で判定します(下表).「ペットボトルのキャップが開けられなくなった」「食欲が落ちて体重が減った」「歩く速さが以前より遅くなった」「何となく疲れた感じがする」「定期的な運動をしていない」.これらは全て「フレイル」のサインなのです.
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フレイルに対する理学療法士の役割
 日本の理学療法士は,「高齢化大国」への対策を担う専門職として,世界から注目されています.理学療法士はフレイルを早く発見し,元の状態に回復させるために重要な役割を担っています.特に,理学療法士が得意とする筋肉の量や筋力の測定,筋の働きを理解した上での筋力トレーニングの実施は,フレイルへの対策として非常に効果的であることが分かっています.理学療法士がフレイルを正しく理解し,適切な対策を行うことで,高齢者が1日でも長く自立した生活を送り,日本の「健康長寿」社会の実現に近づくことが期待されています.

新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科でのフレイルへの取り組み
新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科では,フレイルへの対策として,新潟県佐渡市で高齢者の運動機能・認知機能の測定会を実施しています(写真).学生と教員からなる測定チームが定期的に佐渡へ渡航し,フレイルを早く発見するための研究を進めています.また,健康栄養学科とも協力し,新潟市内のイベントでフレイルなどの啓発活動を行っています(写真).

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佐渡での高齢者の測定会

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新潟市内のイベントでフレイルに関する啓発活動