【在学生の活躍】笠原一希さん(理学療法学科18期生,修士課程1年,バイオメカニクスLab所属,運動機能医科学研究所),吉田麗玖さん(理学療法学科17期生,修士課程2年,バイオメカニクスLab,運動機能医科学研究所),村上優太さん(理学療法学科18期生,修士課程1年,バイオメカニクスLab所属,運動機能医科学研究所)が行った研究論文が,国際誌『Biology of sport』に掲載されました!!

研究の概要:
運動前のウォームアップとして,ストレッチングが広く知られています.そのストレッチングの中でも静的ストレッチと動的ストレッチがあります.近年では,これらストレッチングに代わるウォームアップ方法としてFoam Rollingが注目を集めています.ストレッチングおよびFoam Rollingは,関節の動く範囲である関節可動域が増加しますが,静的ストレッチだけ介入後に筋力が低下することが報告されています.これまで我々の研究室では,静的ストレッチとFoam Rollingの併用効果を検討しました.その結果,静的ストレッチ後にFoam Rollingを行うことで,筋力を低下させずに関節可動域が増加することがわかりました(Nakamura et al. JSCR.2022).そこで今回は,静的ストレッチまたは動的ストレッチとFoam Rollingの併用効果および最適な介入順序を検討し,最適なウォームアップ方法を確立することを目的に研究を行いました.結果として,静的ストレッチとFoam Rollingの併用が,動的ストレッチとFoam Rollingを併用した条件より,関節可動域に与える影響が大きいことがわかりました.また,Foam Rolling後に静的ストレッチを行った条件でのみ,筋力が低下する傾向が認められました.この結果から,関節可動域の増加のみを目的としたウォームアップとして,静的ストレッチとFoam Rollingの併用が推奨され,筋力を低下させることなく関節可動域の増加を目的とする場合は,静的ストレッチ後にFoam Rollingを行うことが推奨されることが明らかとなりました.

笠原さんからのコメント:
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 本研究結果から,より効率的なウォームアップ方法が確立できたのではないかと思っています.Foam Rollingはまだまだ未解明なことが多いため,スポーツ現場だけでなく,病院などの臨床現場でも広く使用されるように,多くの研究報告を行っていきたいと思います.
本研究に関して,ストレッチの研究において世界的権威である中村雅俊先生をはじめ,カナダのDavid G Behm先生,オーストリアのAndreas Konrad先生にもご指導をいただきました.とても興味深い内容となっているので,ぜひ目を通してみてください.

本研究のポイント:
1.静的ストレッチまたは動的ストレッチとFoam Rollingの併用,順序効果を比較した点
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2.全ての条件で関節可動域の増加を認めた点
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すべての条件で関節可動域の増加を認めたが,静的ストレッチとFoam Rollingの組み合わせた場合の方が,動的ストレッチとFoam Rollingを組み合わせた場合と比較して大きな効果量を示しました.

3.Foam Rolling後に静的ストレッチを行う条件でのみ筋力低下傾向を認めた点
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筋力において,Foam Rolling後に静的ストレッチを行った条件でのみ,筋力低下傾向を認めた.一方で,静的ストレッチ後にFoam Rollingを行った条件では筋力の低下を認めなかった.そのため,Foam Rollingは静的ストレッチによる筋力低下から回復させることができることが示唆された.

論文情報:
The comparison between foam rolling either combined with static or dynamic stretching on knee extensors’ function and structure
Kasahara K, Konrad A, Yoshida R, Murakami Y, Sato S, Koizumi R, Behm D, Nakamura M.
Biol Sport.

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