押木ゼミ

 

脳卒中片麻痺患者の歩行における上肢スイングの重要性

歩行は重力に抗して立位姿勢を保持しながら,全身を移動させる複雑な動作である.歩行を決定する因子の1つに骨盤の回旋が挙げられる.歩行における上肢のスイングは,体幹部の捻れを起こし,その捻れが骨盤の回旋を戻す働きがあり,上肢のスイングも歩行を決定する重要な因子と考える.本研究の目的は,上肢・体幹のアプローチ介入前後で麻痺側上肢のスイングが歩行にどのような影響があるのか検討することである.対象者は脳卒中片麻痺患者12名で評価項目は10m全力歩行時間,歩行中の麻痺側上肢のスイング,重心動揺距離及び外周面積である.上肢・体幹に対するアプローチは,我々が考案した体操を行った.その結果,10m全力歩行時間は介入後で有意に短くなった.麻痺側上肢のスイング,重心動揺距離,外周面積は介入前後の比較で有意差は認められなかったものの,麻痺側上肢のスイングが改善された者は12名中3名(25%),重心動揺距離及び外周面積の両方が改善した者は12名中4名(33%)であった.以上のことから,上肢のスイングが歩行において重要な役割を持っていると考えられる.本研究は上肢・体幹の体操を1回行い,介入前後での即時効果を比較した.今後は上肢・体幹の体操の機会を増やし,長期的に行っていくことで,どのような結果が得られるか検討をしていく必要があると考える.

 key words:脳卒中片麻痺,上肢・体幹,歩行,上肢のスイング 

 

在宅脳卒中患者の主観的障害度と客観的機能評価・QOLとの関係性

近年,脳卒中患者の高齢化・重度化により,脳卒中リハビリテーションの目標は,生活の質(Quality of LifeQOL)の向上へと転換してきた.また,脳卒中患者の心理について,本人の考え方と医療者や家族の考え方に相違があるという報告がされている.そこで本研究は,患者自身が感じている「主観的障害度」と医療者や家族が感じている「客観的機能評価」にギャップはあるのか.また,主観的障害度は客観的機能評価やQOLとどのような関係性があるのかということについて検討した.その結果,上肢・手指・下肢の主観的障害度と客観的機能評価に有意な相関関係が認められた.しかし,主観的な粗大運動能力と相関がみられた客観的機能評価項目はTimed Up and Go TestTUG)のみで,主観的障害度と客観的機能評価との間にギャップがあることが分かった.また,下肢の主観的障害度を先行研究に基づき,障害度別に2群に分類しQOLをみると,SF-36の下位尺度のうち,「身体機能」,「全体的健康感」,「活力」,「心の健康」に有意差が認められ,麻痺は身体機能を低下させるばかりでなく,QOLを低下させていることが示唆された.さらに,患者自身が感じている障害度をより反映するため,下肢の主観的障害度を障害度別に5つの群に細かく分類してみると,Stroke Impairment Assessment Set SIAS)やTUG10m歩行時間では主観的障害度が良くても客観的機能評価は高いわけでなく,主観的障害度と客観的機能評価との間にギャップが認められた.そして,SF-36の下位尺度のうち「社会生活機能」,「日常役割機能(精神)」を除く6つの下位尺度では,主観的障害度が良いとQOLも高かったが,「社会生活機能」,「日常役割機能(精神)」では,主観的障害度が良くてもQOLは低い傾向がみられ,主観的障害度とQOLは必ずしも一致していないことが分かった.

key words:主観的障害度,客観的機能評価,SF-36

 

 

脳性麻痺者における筋の伸張速度の違いが関節可動域に及ぼす影響

本研究では,脳性麻痺者1名を対象として,できるだけゆっくりの速度で伸張した際の最大ROMSlow-ROM;以下,S-ROM)と,できるだけ速い速度で伸張し最初に抵抗が生じるまでの最大ROMFast-ROM;以下,F-ROM)を測定した.その結果,膝関節屈曲位での両股関節屈曲,膝関節伸展位での右足関節背屈でS-ROMよりF-ROMの方が狭く,有意差があった(p0.05).これはF-ROMでは,痙縮が生じ可動域が狭くなったためと考えられる.また,両肘関節屈曲と膝関節伸展位での左足関節底屈を除き,測定した関節全てでS-ROMが健常成人の正常関節可動域(以下,参考ROM)より狭かった.これは,痙縮による筋の過活動や運動麻痺による不動の結果,二次的に関節を構成する軟部組織の粘弾性や伸張性等が低下したためと考えられる.

key wordsS-ROMF-ROM,脳性麻痺,痙縮,拘縮

 

母親の生き方と障害児・者の養育環境との関連

本研究は,障害児・者をもつ母親が,日々どのような想いを抱いて生きているかについて着目し,母親の生き方を3つの側面(個人としての自己,家庭人としての自己,社会人としての自己)に分けて実態を調査した.母親の生き方は,現実と理想に差があるのか.そして,その差と母親の心理的QOLQuality of Lifeの関連性や差が生じる要因について分析し,障害児・者の養育環境の主な担当者である母親の心理的状況に着目した.結果,「個人としての自己」における現実-理想自己の差と心理的QOLには負の相関関係がみられた.また,総介護時間,協力頻度と「個人としての自己」における現実-理想自己の差には正の相関関係がみられた.これより,総介護時間,協力頻度が増えるほど子どもは障害が重度であると推測でき,「個人としての自己」において,育児に追われる現実と理想との間に葛藤が生じ,母親の心理的QOLが低下するという関係性があるのではないかと考える.一方,「社会人としての自己」における現実-理想自己の差は小さく,母親は,「自分のことに目を向けたい」,「家庭内での仕事が多い」と感じながらも,子どもを核にした母親,主婦としての役割に生きがいを感じていると考えられる.

key words:障害児,母親,心理的QOL,養育環境

 

脳性麻痺者に対するスタンディングフレームによる持続伸張とROMエクササイズの効果について

本研究は,痙直型両麻痺の脳性麻痺者に対し,多関節へのアプローチが可能なスタンディングフレームによる足関節持続伸張と,関節運動を伴うことで拮抗筋の伸張が促通できるROMエクササイズの二つの介入により下肢痙縮をいかに軽減できるか検討した.両介入後で,右腓腹筋の筋活動増加,10m歩行時間延長,重心動揺の改善が認められた.本症例は手術既往がなく,定型的な立位・歩行パターンを呈している.介入により症例独自のアライメントが修正され,右腓腹筋の筋活動を増加して新たな立位保持戦略をとるようになったと考えられる.そのため,介入直後には新たな筋活動の協調的な働きがまだ実現できず,歩行時間の延長が生じたと考えられる.今後,継続的に介入することで,新たな筋活動による運動学習が促進されれば,より効率的な筋活動が獲得でき歩行時間など,よりよい結果が得られると考えられる.したがって,年長者でも継続的に理学療法(両介入方法)を実施することで歩容や歩行時間の改善が期待できる実証を得た.

key words:脳性麻痺,持続伸張,連続的他動運動

 

 

障害のある子どもの自立度と母親の身体的疲労感の関係について

育児は母親に様々な不安をもたらし,問題となっている.さらに,障害のある子どもを抱えたわが子を療育していく場合,子どものコミュニケーションの困難さ,移動や食事介助等,多くの困難に直面することが考えられる.障害のある子どもの長期にわたる療育は,その家族に大きなストレスを生み,親子関係や家族の崩壊を招くことが危惧される.富安ら2)の脳性麻痺児を対象とした研究では,子どもの障害が重症である母親は精神的疲労が多いことを述べており,運動障害の有無のみだけでなく障害の重症度・自立度が母親の健康状態に何らかの影響を与えていることを示唆している.本研究は,母親の健康状態を阻害しうるであろう子どもの介護状態,つまり障害のある子どもの自立度に焦点を当て,母親の身体的疲労感との関係を明らかにした.アンケート調査により,障害のある子どもを持つ母親85名に対し,基本的情報,母親の身体的疲労感である自覚症しらべ,子どもの自立度としてWee-FIMを調査した.結果,母親・子どもの年齢が低いほど母親の身体的疲労感は強くなるという有意な負の相関が認められた.また,子どもが就学前や在宅で生活している場合に,母親の身体的疲労感が強くなる傾向が見られた.子どもの障害別に母親の身体的疲労感を比較すると,運動機能障害群,対人・知的障害群で母親の身体的疲労感が強く,ダウン症候群の母親の身体的疲労感は弱い傾向が見られた.母親の身体的疲労度は子どもの障害の変化だけではなく,子どもや母親の年齢,生活・環境の変化により大きな影響を受けやすいことを理解し,子ども・家族にアプローチしていかなければならないことがわかった.

key words:障害のある子ども,母親,身体的疲労感,Wee-FIM

 

AFOを処方された脳卒中患者の身体機能について

本研究の目的は,短下肢装具(ankle foot orthosis:以下AFO)が処方されているにも関わらず,取り外して選択的に使用している症例{装具(±)群}の,身体能力を明らかにすることである.麻痺の重症度としてブルンストローム ステージ,下肢筋力として膝伸展筋力,静的バランス機能として静止立位における重心動揺を計測し,装具の使用状況で比較・検討した.その結果,装具(±)群は,AFOを使用していない症例{装具(-)群}よりも,麻痺は重度であり,麻痺側膝伸展筋力も低下し,不安定な静止立位をとっていることが示唆された.また,重心動揺では,装具(±)群はAFOを使用することにより,静止立位は安定し,非麻痺側に偏位していた重心動揺が減少する傾向を示した.よって本研究の身体機能で装具(±)群は,装具(-)群よりも低い結果となり,AFOは使用した方が良い可能性が示唆された.今後はAFOを使用しない理由を明確化し,個人のQOLを向上させることを目的にAFOの使用を考慮する必要があると考える.

key words:脳卒中,AFO,膝伸展筋力,ブルンストローム ステージ,重心動揺

 

相馬ゼミ

 

立ち上がり動作時の膝関節角度・動作速度の違いが足圧分布に与える影響

本研究の目的は,椅子からの立ち上がり動作において,膝関節屈曲角度と動作速度を変化させたとき,足圧分布,特に足趾荷重量にどのような影響があるかを明らかにすることである.インフォームドコンセントの得られた健常成人11名を対象とし,椅子からの立ち上がり動作時の足圧分布を測定した.測定条件として,膝関節屈曲角度を90°,100°,110°の3条件,動作速度をbpm50bpm802条件とし,合計6条件で動作を行った.解析は,足底を足趾部,前足部,中足部,後足部に4分割した場合の足趾部と前足部の接触圧力の左右の総和を比較した.また,解析区間は,立ち上がり動作時の身体の前方移動相(第Ⅲ相)と,上方移動相(第Ⅳ相)とした.その結果,第Ⅲ相においては,動作速度に関わらず,足趾部と前足部の荷重量は,膝屈曲90°に対して110°で有意に増加した(p<0.01).第Ⅳ相においては,bpm80で足趾の荷重量が膝屈曲90°に対して110°で有意に増加した(p<0.05).今回の結果から,足部を後ろに引くことで膝関節屈曲角度を大きくした立ち上がり動作,また速い立ち上がり動作における足趾機能の重要性が示唆された.

key words:立ち上がり動作,足圧分布,足趾・前足部

 

スクワット動作における外側ウェッジが足趾部・前内側部圧に及ぼす影響
~足角・膝関節角度の違いによる検討~

本研究の目的は,外側ウェッジを装着したスクワット動作において,足角・ウェッジの高さを変化させた時の足趾部・前内側部圧に及ぼす影響を明らかにすることである.対象はインフォームドコンセントの得られた健常成人14名とし,課題条件は足底に何も装着しない場合(ウェッジなし),高さ10mmの外側ウェッジを装着した場合(ウェッジ10mm),高さ20mmの外側ウェッジを装着した場合(ウェッジ20mm)の3条件とし,スクワット動作を行なわせた.スクワット時の膝関節屈曲角度は30度(膝30度),60度(膝60度)の2条件,足角は0度,20度の2条件とし,足趾部・前内側部の荷重率について解析した.その結果,足趾部・前内側部ともにウェッジなし,ウェッジ10mm,ウェッジ20mmすべてにおいて足角0度に対し足角20度で荷重率が有意に増加した(p0.01).足角20度では,足趾部・前内側部ともにウェッジなしに対してウェッジ20mmで荷重率が有意に増加した(p0.05).また,膝30度に対し膝60度で荷重率が有意に増加した(p0.01).本研究から,ウェッジの挿入,足角の角度,膝関節屈曲角度の増加が,立位・歩行時に必要な前足部荷重に有効であることが示唆された.

key words:スクワット動作,外側ウェッジ,足圧分布

 

腰部の固定が動的立位時の身体動揺に及ぼす影響

本研究の目的は,腰椎固定が動的立位時の身体動揺に及ぼす影響を明らかにすることである.対象は健常男性7名とし,課題条件は装具なし,軟性コルセットを装着した場合,硬性コルセットを装着した場合の3条件とし,不安定な床面上(Stability System)30秒間立位保持させた.床面の硬さは,レベル862条件とした.被験者の右側の頭部,肩関節,股関節,膝関節,足関節の計5箇所に赤外線反射マーカーを貼付,総軌跡長を算出した.その結果,レベル8の頭部の総軌跡長において,軟性コルセットに対し硬性コルセットの方が有意に大きな値を示した(p0.01).また,レベル86ともに総軌跡長において,頭部,股関節の総軌跡長は,肩関節・膝関節・足関節の総軌跡長に比べて大きな値を示した.以上のことから,腰椎装具を装着することは,姿勢制御能力を低下させることが考えられた.そのために,腰椎装具装着時には転倒へのリスクについて配慮する必要があることが推察された.

key words:腰椎固定,動的立位,身体動揺

 

外側楔状足底板を使用してのスクワット運動が大腿四頭筋活動に及ぼす影響

本研究の目的は,外側楔状足底板(以下,足底板)を使用したスクワット運動が大腿四頭筋の筋活動に及ぼす影響を明らかにすることである.インフォームドコンセントの得られた健常成人12名を対象とし,膝関節を30度,60に屈曲したスクワット運動を行わせ,足底板を装着しない場合(以下,足底板なし),外側が10mm厚い足底板(以下,足底板10mm),外側が20mm厚い足底板(以下,20mm足底板)と股関節中間位,股関節内転位でのスクワット運動を組み合わせた6条件において,内側広筋(以下,VM),大腿直筋(以下,RF),外側広筋(以下,VL)の筋活動量を測定した.その結果,膝関節屈曲30度の股関節中間位では各筋に有意な差はなかった.膝関節屈曲30度の股関節内転位では足底板装着によりVLVMより有意に高い活動量となった(p0.05).しかし,膝関節屈曲60度の股関節中間位では,足底板装着により,VMVLの活動量に有意な差はなく,股関節内転位においても同様の結果となった.以上の結果から,膝屈曲60度での,足底板の装着と股関節内転動作を組み合わせたスクワット運動では,VMVLに対する筋活動量の割合は増加することが示唆された.

key words:外側楔状足底板,大腿四頭筋,筋活動量,スクワット運動

 

テーピングによる足関節固定が動的立位姿勢におよぼす影響
~足幅・足角の違いに着目して~

本研究の目的は,テーピングが動的立位姿勢におよぼす影響について明らかにすることである.対象はインフォームドコンセントの得られた健常成人16名とした.測定機能付自力運動装置を用いて,両足関節に対しテーピングなし・ありの2条件において,足位置は足角0°,足角20°,肩幅・足角0°,肩幅・足角20°の4条件を施行し不安定板上で立位保持をした.測定項目は,重心動揺における総軌跡長および矩形面積を測定した.その結果,総軌跡長では,足角0°,足角20°でテーピングなしに対し,テーピングありが有意に小さい値を示し(p0.05),矩形面積では足角20°でテーピングなしに対し,テーピングありが有意に小さい値を示した(p<0.05).よって,テーピングは足関節の関節トルクの影響を減少させ,足関節による微細な動揺を制御することで重心動揺が減少すると考えられた.以上より,テーピングによる足関節固定は足部を安定させる.

key words:動的立位,テーピング,重心動揺,足関節

 

全身振動刺激が動的立位姿勢に及ぼす影響
~振動周波数に着目して~

本研究の目的は,全身振動刺激(Whole Body Vibration:以下WBV)が,動的立位姿勢保持に及ぼす影響を明らかにすることである.対象はインフォームドコンセントの得られた健常成人21名とし,使用機器には,振動刺激トレーニング装置と測定機能付自力運動訓練装置を用いた.刺激周波数は15Hz20Hz25Hz3条件とし,30秒間施行し,それぞれ刺激直前,直後,2分後の重心動揺総軌跡長(以下,総軌跡長),矩形面積を測定した.その結果,総軌跡長では,15Hz20Hzにおいて直前に対して直後,直後に対して2分後が有意に小さな値を示した(P0.05).一方,矩形面積では有意な差は認められなかった.今回の結果から,全身振動刺激は動的バランス能力の向上に有効であることが示唆された.

key words:全身振動刺激 動的立位姿勢 振動周波数

 

前方へのステップアップ動作における中殿筋の筋電図学的解析
~台の高さおよび動作速度に着目して~

本研究の目的は,前方へのステップアップ動作時において,台の高さおよび動作速度の違いによる中殿筋のピーク値および筋活動量を明らかにすることである.対象は健常成人10名とし,課題条件は台の高さを0cm20cm40cm3条件,速度はメトロームにてbpm60bpm1002条件に規定し,計6条件とした.筋電図導出部位は支持脚(左下肢)の中殿筋とし,重心位置を三次元動作解析装置にて測定し,重心の移動開始時点から,ステップ脚(右下肢)が接地するまでを解析区間とした.その結果,中殿筋の筋活動のピークが,右下肢足趾離床直前に見られ,速さbpm60では,ピーク値が高さ0cmに対して40cmで有意に増加し,筋活動量が高さ0cm20cmに対して40cmで有意に増加した.速さbpm100では,ピーク値,筋活動量ともに高さ0cm20cmに対して40cmで有意に増加した.以上のことから,高さ40cmの台へのステップアップ動作は,歩行時に必要な中殿筋の活動の獲得に有効であり,自由速度でのステップ動作で中殿筋の活動を高めることが可能であることが示唆された.

key words:ステップアップ動作,中殿筋,筋電図

 

渡辺ゼミ

 

中殿筋の筋力増強運動における筋活動量の検討
Open Kinetic Chain及びClosed Kinetic Chainに着目して~

本研究の目的は,Open Kinetic Chain(以下,OKC及びClosed Kinetic Chain(以下,CKCでの運動時における中殿筋の筋活動量を比較し,OKCを基準としてCKCにおける筋活動量の指標を立案することが可能であるのかを検討することである.対象は実験内容を説明し同意を得られた股関節に整形外科疾患の既往がない健常成人女性14名とした.OKCとして側臥位での下肢挙上運動,CKCとして踏み台昇降を行い,各動作における中殿筋の筋活動量を比較した.その結果,本研究における課題動作ではOKC負荷なしとCKC10cm昇段,OKC1.5㎏負荷とCKC30cm昇段,OKC2.0㎏負荷とCKC40cm昇段において近似した筋活動量が得られたが,OKCCKCの間に明確な相対性を見出すことは出来なかった.これは課題動作及び負荷量の不足が原因であると考えられ,今後課題動作及び負荷量の種類を増やすことによって指標の立案が可能であることが示唆された.

key words:中殿筋,OKCCKC

 

腹部引き込みが脊柱起立筋活動に与える影響
~リーチ動作に着目して~

本研究の目的は,リーチ動作中における持続的な腹部引き込みが脊柱起立筋活動に与える影響を明らかにすることである.対象は健常成人13名とし,安楽座位,腹部引き込みを行いながらの2条件のリーチ動作を行い,最大リーチでの筋電図を測定した.被験筋はTh8Th12L3棘突起右側の脊柱起立筋(以下Th8Th12L3)とし,また腹部引き込みの確認を行うため外腹斜筋の筋活動も測定した.その結果,脊柱起立筋活動は Th8では2条件で有意な差は見られなかったが,Th12L3では腹部引き込み時に有意に低い値を示した.これは腹部引き込みにより腹腔内圧が高まったことで脊柱へのストレスが分散されたため,脊柱を支えるための筋活動も低下するからである.以上のことから,リーチ動作という日常的な動作中においても,その間持続的に腹部引き込みを行うことで腰部への負担が軽減され,腰痛予防につながるのではないかということが示唆された.

key words:腹部引き込み,リーチ動作,脊柱起立筋

 

脊柱矢状面アライメントが歩行能力に及ぼす影響

本研究の目的は,高齢者に特徴的な脊柱後彎のアライメントが,歩行能力にどの程度影響するのかTimedUp & GoTest(以下TUG)により明らかにすることである.方法は,若年健常成人男性10名を対象に脊柱後彎アライメントを設定し,普段の姿勢と円背姿勢の2条件でTUGの所要時間及び歩幅を測定し,脊柱後彎アライメントが歩行能力にどのような影響を与えるのか検討した.今回,赤外線センサーを用い,TUGを相別に時間分析した.結果は,TUG全体・各相に円背姿勢で所要時間及び歩幅に有意差が認められ、脊柱矢状面のアライメントのみでも歩行能力に影響を及ぼすことが確認された.TUGは,歩行能力だけでなく動的バランスの検査でもあり,本研究の結果より動的バランス能力にも影響を及ぼすことが示唆された.

key words:脊柱後彎アライメント,TUG,歩行能力

 

質量不明重量物のリフティング動作が脊柱起立筋・下肢筋に及ぼす影響

本研究の目的は,質量不明重量物のリフティング動作が脊柱起立筋,下肢筋に及ぼす影響について検討することである.今回,健常成人男女 13名を対象としてリフティング動作時の脊柱起立筋,大殿筋,半腱様筋,外側広筋の筋活動を筋電計を用いて双極誘導にて導出した.重量物の質量は,被験者の体重の5%,15%,30%の3種類とし重錘をビールケースに詰め,床面から持ち上げさせた.質量不明の状態で2回ずつ行った後に,重量物の重さを確認させ同様に2回ずつ行った.重量物が離床し始めた瞬間から完全に離床した瞬間までをⅠ相,その後立位になるまでをⅡ相とし%MVCで正規化した.その結果体重の5 %において,脊柱起立筋のⅠ相・Ⅱ相,大殿筋のⅡ相,半腱様筋のⅠ相・Ⅱ相で質量不明の場合が質量を把握している場合に対し有意に大きい値を示した.質量不明の場合リフティング前に構えの姿勢をとり,動作中も質量を多く見積もったことにより必要以上の筋力が発揮され,質量不明の方が質量を把握している場合より%MVCが大きくなったと考えられる.これは脊柱起立筋のみならず,下肢筋でも同様の傾向がみられた.

key words:リフティング動作,質量不明,筋活動

 

靴の足長の変化が歩行へ与える影響

本研究の目的は,靴の足長が変化した時に歩行動作への影響はどの程度あるのか検討することである.日本において靴のサイズは足囲と足長より定められているが,足囲の表示されている靴は少なく,また足長のみで靴を選ぶ人も多い.そこで本研究では靴の足長に注目し,健常者で普段足長が26cmの靴を履いている10名を対象とし,25cm26cm27cm28cmの靴を履いて歩行をしてもらい,歩行時の股関節,膝関節最大屈曲角度および関節モーメント,また歩幅や歩行速度を測定し,変化がみられるのか検討した.仮説として,足長が大きい靴では,脱げ易さを代償するために歩行速度の低下や歩幅の減少がみられると考えていた.結果は,歩幅には変化がみられなかったが,膝関節最大角度,膝関節伸展モーメント,歩行速度に変化がみられた.特に膝関節伸展モーメントの変化によって,歩行時の緩衝能,重心制動機能の低下が示唆され,安全な歩行を目指す上で阻害因子となると考えられる結果となった.

key words:靴,履物,サイズ,足長,歩行