久保ゼミ

 

異なる荷物の持ち方が階段昇降時の体幹角度へ及ぼす影響

高齢者は,日常生活で荷物の運搬及び階段昇降に負担を感じやすい.さらに,荷物を運びながら階段昇降を行うと,その負担はさらに増加し体幹に影響を及ぼす.本研究の目的は,異なる荷物の持ち方が階段昇降時の体幹の前後傾,側屈,回旋の動きに及ぼす影響を比較,検討することである.対象は健常成人10名とした.異なる荷物の持ち方で階段昇降中,骨盤に対する上部体幹を相対角度とし,平均値と振幅の変化を求めた.その結果,4つの異なる荷物の持ち方の間では,荷物なしの「回旋」振幅は有意に大きかった.体幹角度の平均値では,右片手持ちの左側屈,右回旋角度が有意に大きく,リュックを背負う時の前傾角度は有意に小さかった.階段動作の昇段と降段間では,降段で体幹の前後傾と回旋角度が有意に小さかった.荷物を持ちながら階段昇降すると,体幹の回旋角度が抑えられることが示唆された.右片手持ちでは荷物の重心偏移に伴う非対称なアライメントを呈した.リュックを背負う場合では,体幹相対角度の算出方法の違いにより,体幹の前傾角度が減少したと考えられる.

key words:荷物,階段昇降,体幹角度

 

肩関節角度が外旋筋疲労に及ぼす影響
~疲労前後の肩関節外旋トルク比と小円筋活動比に着目して~

投球動作は,肩や肘などの上肢の障害が多く,近年では投球障害予防に関する研究が進んでいる.本研究の目的は,肩関節角度の違いが,疲労による外旋トルクと小円筋活動量へ与える影響を明らかにすることである.健常成人男性10名を対象に,肩甲骨面で肩甲棘長軸と上腕骨長軸の延長線上が一致するゼロポジション位(以下ZP位)と45deg外転位にて遠心性の疲労をさせ,90deg外転位での疲労前後のトルクと,疲労課題施行中の小円筋活動比を比較した.角速度180deg/secでの外旋トルク測定において,疲労前後の外旋トルク比は,ZP位のほうが45deg外転位に比べ有意に大きい値を示した.360deg/secでは有意差は認められなかったが,同様の傾向を認めた.疲労課題施行中の疲労前後の筋活動比では有意差が認められなかったが,ZP位のほうが大きな筋活動比を示す傾向にあった.ZP位で外旋筋が疲労しにくい結果について,棘上筋や肩甲胸郭筋など外旋筋とは別の筋の関与があると考えた.

key wordsBIODEX,筋電図,投球障害,筋疲労

 

椅子からの起立動作分析

高齢者の起立動作の成否は,下肢筋力等に加え動作方法により大きく影響される.本研究の目的は,起立動作の体幹前傾運動の違いが,起立に与える作用を定量的に理解することである.対象は健常成人男性10名とした.課題動作は,体幹前傾角度と速度に制限を加えた,椅子からの起立動作とした.測定項目は圧力中心(以下COPcenter of pressure)と離殿時体幹角度とし,さらに離殿時体幹角加速度を算出した.運動開始から離殿までのCOP前後方向軌跡により,起立動作の体幹前傾運動の戦略が力制御戦略と運動量戦略に分類できた.力制御戦略では離殿時体幹角度と角加速度間に相関がなく,起立可能群は起立不可能群に対して有意に大きな体幹角度で離殿していた(p0.05).運動量戦略では離殿時体幹角度と体幹伸展方向への角加速度間に相関が見られ,起立可能群は起立不可能群に対して有意に大きな体幹角度と体幹伸展方向への加速度で離殿していた(p0.05).二戦略の体幹に要求する運動が異なることから,起立動作指導の際にリスク管理面を考慮しつつ,対象者の能力や動作方法に合わせて戦略選択し,指導に役立てる必要があると考えられた.

key words:起立動作,力制御戦略,運動量戦略

 

下肢関節可動域制限による歩行中の体幹動揺の変化
~単一及び複数制限での比較~

高齢化により変形性膝関節症(膝OA)患者が増加している.膝OA患者はアライメント不良や疼痛などを呈するため,歩行時に体幹の動揺が増加し,歩容が悪くなる.本研究の目的は,下肢の関節可動域制限及び,歩行率の違いによる歩行時の体幹の動揺の変化に着目し,比較,検討することである.健常若年者8名を対象とし,下肢関節を制限し,歩行時の上部体幹及び骨盤の前後傾,側屈,回旋角度を計測した.立脚期では膝関節のみの単一制限より,膝関節と足関節の複数制限の方が上部体幹及び骨盤の側屈角度が増加した.特に両側での複数制限よりも一側での複数制限の方が,より側屈が増加していた.また,上部体幹よりも骨盤での側屈角度増加が大きかった.高い歩行率では上部体幹側屈角度がより増加した.膝関節伸展制限によって生じる脚長差は,同側足関節の可動性や骨盤の側屈によって代償されており,上部体幹の代償的な側屈には脊柱の可動性が影響を与えていると考えられる.しかし,高齢者の場合には脊柱の可動性低下によって健常者よりも上部体幹の動きは増加し,歩容の悪さはより著明になると推測できる.

key words:変形性膝関節症,歩行,関節可動域制限,体幹

 

手掌の大腿部接地が立ち上がり動作に及ぼす影響

日常に行われている椅子からの立ち上がり動作を,多くの人は手を大腿部について行っている.本研究の目的は,椅子からの立ち上がり動作で手を大腿遠位部につくことが膝関節,足関節に及ぼす影響を明らかにすることである.若年健常成人13名を対象とし,「手をつかない立ち上がり動作」と「手をつく立ち上がり動作」の2条件における,体幹前傾角度および下肢関節モーメント,仕事量と平均筋活動を計測した.手をつかない立ち上がり動作と比べ,手をつく立ち上がり動作において,離殿時の体幹前傾角度が有意に増加し(p0.01),膝関節伸展モーメント,足関節底屈モーメントが有意に減少した(p0.01).また膝関節の求心性の仕事量および外側広筋,腓腹筋活動量も有意に減少した(p0.05).今回の結果より,手をつく立ち上がり動作は,膝関節にかかる負荷を減少させる効果があると考えられ,そのために椅子からの立ち上がり動作が,行いやすくなると考えられた.

key words:立ち上がり動作,手を大腿部につく,膝関節

 

片脚立位時のバランス維持から破綻までの足圧中心解析

一般的に重心動揺計を用いて静的バランス能力を評価する際には,足圧中心(COP)動揺の要約統計量(振幅,標準偏差,面積,軌跡長など)が大きいことは,バランス能力が低いとして解釈される.本実験では,片脚立位でのバランス保持から破綻に至るまでのCOP動揺を測定し,COP動揺の要約統計量の経時的な変化を解析した.実験結果では,要約統計量の値の変化は片脚立位のバランスの保持から破綻へ至る変化に対応していなかった.異なる被験者間での要約統計量の大きさと片脚立位保持時間にも相関が見られなかった.同一被験者では,片脚保持時間が15秒以上の場合,その保持時間と要約統計量の大きさにも相関がみられなかった.従って約15秒以上の片脚立位では,要約統計量でバランス能力を直接評価することはできないと考えられる.要約統計量以外の別の解析方法が必要だと考える.

key words:バランス,足圧中心,片脚立位,要約統計量

 

足幅の違いが足圧中心動揺に及ぼす影響

高齢者の転倒は,物理的要因である支持基底面と足圧中心(COP)の位置関係の破綻によって起こるものである.しかし,物理的要因は意識することで容易に変化させることが可能である.本研究の目的は,足幅を左右方向のみに広げることにより,前後,左右方向のCOPの動揺がどのように変化するのかを検討することである.対象は健常成人10名とした.COPの動揺の計測を足幅条件(0cm5cm10cm15cm)と,視覚条件(開眼,閉眼)を合わせて行った.足幅の条件の順番はランダムで行い,視覚条件は交互に行った.測定項目は総軌跡長,前後,左右方向軌跡長,前後,左右方向標準偏差とした.結果,前後方向軌跡長では足幅0cmに対して5cm10cm15cmの値が減少した.また,閉眼時に比べ,開眼時では前後方向標準偏差以外の測定項目の値が有意に減少した.足幅を広くすることや,開眼をすることによりCOPの動揺は減少するが,前後方向標準偏差は変化しなかった.足幅0cmでは支持基底面が狭いため,他の足幅3条件と比べ,前後方向軌跡長が増加し,有意差が出たのではないかと考えた.

Key  words:足圧中心(Center Of PressureCOP),支持基底面,静止

 

亀尾ゼミ

 

腰仙椎装具(軟性)の装着強度について

軟性腰仙椎装具を用いた治療では,早期の自己中断が臨床上問題になっている.本研究では,簡易コルセット(市販の軟性腰仙椎装具)を用い,最も快適な装着強度を見出だし,軟性腰仙椎装具の早期自己中断の減少につなげること,軟性腰仙椎装具の装着強度ごとの機能性を明らかにすることを目的に実験を行った.対象は健常成人女性10名とし,言語による主観的装着感,VASを用いて最も快適な装着強度を明らかにし,関節可動域制限,動作時間の側面から装着強度ごとの機能性を明らかにした.その結果,最も快適な装着強度は90%であり,VASの値,関節可動域の制限率と装着強度との間には,比例関係が存在した.また,動作時間の延長と装着強度は比例関係がないことが示された.

key words:軟性腰仙椎装具,装着感,体幹可動性,基本動作,動作所要時間

 

学童期野球選手の投球障害調査

本研究の目的は学童期野球選手における投球障害時の受診行動と保護者および指導者の関わりを調査することである.対象は群馬県高崎市の少年野球チームの選手と保護者とし,郵送法によるアンケート調査を実施した.調査項目は,投球障害と受診行動について,選手に肩肘痛が発生した際の相談相手,家族の会話頻度,保護者の対応などである.その結果,依頼した15チーム中14チームから回答を得,回収率は84.7%であった.

家族との会話頻度の高い選手は低い選手に比べ,痛みが軽度のうちに受診する結果を得た.そのため,選手と家族との会話が早期受診には必要と考えた.しかし,実際に保護者が選手に肩肘痛を訴えられた際,考えているよりも対応が遅れる傾向となったため,保護者の投球障害への理解と早期受診を促す必要があると考えた.また,選手は保護者だけでなく指導者にも肩肘痛を訴えているため,指導者と保護者間の連絡が必要であると考えた.

key words:学童期 投球障害 受診行動 保護者

 

新潟地区高校野球選手における傷害調査

本研究の目的は,新潟地区高校野球選手における傷害発生状況,受療行動,受傷後の練習内容,傷害予防としての役割が広く認識されているウォーミングアップ(以下,WU),クーリングダウン(以下,CD),ストレッチの実施状況を調査することである.新潟県高校野球連盟に加盟している新潟地区の高等学校の選手を対象として,郵送法によるアンケート調査を実施した.その結果,高校入学後の傷害では,下肢の傷害も多く発生し,下肢の傷害数が若干上肢の傷害数を上回っていた.野球の競技特性上,上肢のメディカルサポート,コンディショニングが重要視されていることが考えられるが,下肢の傷害数も多く発生していることから,下肢のコンディショニングも重要であることが示された.WUCD,ストレッチの実施率は高く,さらにWUCDの平均実施時間は,傷害予防に対して理想的な時間をかけて実施されていることがわかり,傷害予防として広く実施されていることが示された.

key words:アンケート,高校野球選手,傷害,コンディショニング

 

McConnellテーピングによる内側広筋斜走線維・外側広筋の筋活動の変化

膝蓋大腿関節痛(pattellofemoral painPFP)は,膝蓋大腿関節の安定性の欠如により痛みが引き起こされる症状である.McConnellは疼痛を軽減させるためのテーピング技術を開発し,効果を発揮してきたが,そのメカニズムは解明されていない.このメカニズムの解明のために,健常者に対してMcConnellテープを施行し,表面筋電図を用いて内側広筋斜走線維と外側広筋の筋活動の変化を考察することとした.女性被験者のスクワット,昇段動作で外側広筋に対する内側広筋斜走線維の筋活動が有意に増加した。一方,フォワードランジでは有意な変化はみられず,McConnellテーピングが速度の遅い運動に反応しやすいということが示唆された.しかし,男性被験者では全てのテーピング手技,運動で有意な変化はみられず,McConnellテーピングが疼痛の他の何らかの要素に反応する可能性が考えられた.

key words:内側広筋斜走線維, McConnellテーピング,膝蓋大腿関節痛

 

日常姿勢が腹横筋に及ぼす影響

腹横筋は体幹筋群の最も深層でローカル筋システムに分類される.正常な場合,ローカル筋は主動作筋となるグローバル筋の収縮に先立って動員され脊椎分節的安定化に貢献する.しかし,一部の腰痛患者ではこの収縮順序が乱れると言われている.本研究では,日本人の文化的特徴であるあぐらと正坐を取り上げ,上肢挙上時の腹横筋収縮を超音波診断画像装置を用いて計測した.上肢を素早く挙上させた際,腹横筋厚は有意に増大した.姿勢別では,腰椎中間位であったあぐらと正坐が,腰椎後彎位の椅子坐位と比較して有意に腹横筋厚の増大がみられた.腹横筋を中心としたローカル筋は素早い運動に良く反応することが確認された.またRichardsonらが言うように腰椎中間位では,腹横筋を動員しやすいことが示唆された.腹横筋の運動学習を行う場合,腰椎中間位でエクササイズを行うよう指導することが効果的であると考える.

key words:腹横筋, 姿勢 ,超音波画像診断装置

 

肩関節内旋筋・外旋筋疲労が投球フォームに与える影響

肩のスポーツ障害で圧倒的多数を占める野球選手の投球障害には,肩関節内外旋筋のバランスの乱れや疲労が関与していると考えられる.そこで,野球経験のある男性20名を対象に,等速性筋力測定機器(BIODEX)を用いて肩関節内旋筋または外旋筋を疲労させ,三次元動作解析装置(VICON)を用いて疲労前後の投球動作を比較検討した.その結果,内旋筋疲労後のlate cockingからaccelerationまでの間では肩関節外旋角度,最小外転角度が有意に減少した.

 内旋筋疲労により,late cockingからaccelerationまでの間では最小外転角度の減少,いわゆる肘下がりに類似する投球フォームの変化がみられた.また,内旋筋疲労の即時的な影響により,外旋角度は減少し,全回旋可動域を減少させることが示唆された.これらのことから,内旋筋疲労の即時的な影響は投球障害に関与することが示唆された.

key words:肩関節内旋筋,肩関節外旋筋,疲労,投球フォーム,投球障害

 

真下投げの投球動作解析

本研究の目的は,真下投げと通常の投球動作の二つの投球動作を三次元動作解析システムによって解析し,この二つの投球動作にどのような違いがあるのかを明らかにすることである.野球経験者6名を対象とし,5m先のネットに向かって投球を行った後にリリースポイントの真下の目標ポイントに向かって真下投げを行った.その結果,肩関節最大外旋角度は有意に小さくなり(P0.05),最大外旋時における体幹回旋角度が有意に大きくなり,水平内転角度は有意に減少した.投球軸に対する肩甲骨面角度は最大外旋時及びボールリリース時ともに小さくなるという有意な傾向が見られた.これらの結果から肩関節最大外旋角度,水平内転角度,投球軸に対する肩甲骨面角度の減少と体幹回旋角度の増大がストレスのかからない投球動作であることが示唆された.

key words:投球,三次元動作解析,真下投げ

 

石黒ゼミ

 

ハイヒール靴の踵の形状の違いが歩行に及ぼす影響
~磨耗した靴を想定して~

本研究では,新品のハイヒール靴と,ある程度磨耗したハイヒール靴が歩行に与える影響について,三次元動作解析装置(VICON)と床反力計を使用し分析した.健常成人女性7名を被験者とし,裸足,新品のハイヒール靴,加工したヒール靴の3条件で歩行動作を行い,床反力最大値,足・膝・股関節モーメント最大値を各条件間で比較検討した.その結果,加工したハイヒール靴に比べ,新品のハイヒール靴で,踵接地直後に制動から推進方向の床反力に転じた.また,関節モーメントでは,加工したハイヒール靴に比べ,新品のハイヒール靴において足関節底屈モーメントが有意に増加し,新品のハイヒール靴に比べ,加工したハイヒール靴において股関節伸展モーメント,膝関節屈曲モーメントが有意に増加した.このことにより,新品のハイヒール靴歩行では,踵接地直後に現れる推進方向の床反力に対し,足関節底屈モーメントで代償し,加工したハイヒール靴歩行では,股関節伸展モーメント,膝関節屈曲モーメントで推進方向の床反力を制動していると推察された.また,ハイヒール靴歩行は,推進方向の力の出現や,足関節底屈モーメントの増加から,足関節での制御が難しいと考えられた.

key words:ハイヒール靴,床反力,関節モーメント

 

歩行におけるMBT靴の機能検証
~荷重応答期に着目して~

現代社会では運動不足による筋力低下や硬い路面上での歩行などの生活環境により,筋・関節への負担が大きくなり,腰痛や肩こり,関節痛などが引き起こされるといわれている.Masai Barefoot Technology(以下,MBT)はこれらの問題を解消できるエクササイズ器具として期待され,Exercise-DVDが同封されており,MBT靴とエクササイズの併用を推奨している.そこで,本研究の目的をMBT靴が歩行に及ぼす影響を力学的に明らかにすることとした.条件を運動靴とMBT靴での歩行,さらに同封されているExercise-DVDを行う前後(E.前とEx.)で測定し,全4条件で各条件の歩行動作を試行した.三次元動作解析装置を用いて計測し,歩行動作における右下肢の荷重応答期を解析対象区間とした.その結果,足関節の角速度最大値にて,MBT靴が運動靴に対し,底屈角速度の有意な減少がみられた.結果から,MBT靴の足底の特異的な形状(ティルティング・エッジ)が底屈角速度最大値を減少させたと考えた.また,踵接地時における底屈角速度の減少は,ヒールロッカーの作用を大きく機能させ,衝撃緩衝作用が働くと考えた.

key wordsMBT靴,角速度,三次元動作解析装置

 

スポーツ外傷における冷却療法が跳躍動作に及ぼす影響
~足関節に着目して~

本研究の目的は,スポーツ外傷における冷却療法が跳躍動作に及ぼす影響を足関節に着目し,力学的変化から明らかにすることである.健常成人男性8名を対象とし,使用機器には,三次元動作解析装置および床反力計を用いた.冷却施行前と冷却施行後の2条件で最大努力による反動垂直跳びの力学的変化を比較検討した.その結果,しゃがみ込み時の足関節背屈角度最大値,跳躍時の足関節底屈角度最大値,跳躍時の足関節底屈モーメント最大値,床反力垂直成分最大値,跳躍高が冷却施行前に対し,冷却施行後に有意に減少した.以上の結果から,冷却により下腿三頭筋の筋力低下だけでなく,弾性要素としての働きが低下することによっても足関節底屈モーメントの低下がおこると考えた.そして,足関節底屈モーメント最大値の低下により跳躍高の低下が生じると考えた.つまり,足関節のスティッフネスが高まると動作にも影響を及ぼすことが示唆された.

key words:冷却療法,跳躍動作,スティッフネス,足関節底屈モーメント

 

踵の形状の違うヒール靴が下肢関節モーメントに及ぼす影響について

~階段の降段動作に着目して~

本研究の目的は,踵の形状の違う2種類のヒール靴が階段降段時にどのような影響を与えるのか,下肢関節モーメントと下肢筋活動の観点から力学的に解析することとした.使用靴はハイヒール靴と,現在流行しているウェッジヒール靴の2種類を用い,ヒール高は2靴ともに6.0cmとした.2種類の靴を着用し,階段降段動作を試行した.対象は健常女性7名とし,三次元動作解析装置,床反力計および表面筋電図を用いて2条件における下肢関節モーメントおよび右下肢筋活動量を計測した.解析区間は右脚の立脚期とし,第Ⅰ相を右脚足尖接地から左脚離床時までとし,第Ⅱ相を左脚の遊脚相から左脚の足尖が接地するまでの右脚立脚相とした.結果はウェッジヒール靴はハイヒール靴に比べ,第Ⅰ相の最大値において足関節底屈モーメントおよび膝関節伸展モーメントが有意に減少した(p<0.05).このことから,ウェッジヒール靴はヒール部分での衝撃吸収作用が生じ,ハイヒール靴よりも緩衝作用が高いため,ハイヒール靴に比べ下肢に負担が少ないヒール靴といえるのではないかと推測された.

key words:ハイヒール,ウェッジヒール,階段降段動作,下肢関節モーメント

 

足浴による全身の血液動態
~低濃度人工炭酸水足浴とその比較~

足浴は,近年高齢化が進む中で安全かつ手軽にできる部分浴の手段のとして注目されてきている.本研究では,足浴による全身の生理学的変化,非浸水部(僧帽筋上部)の皮膚における変化に着目した.また,温水足浴(以下,温水浴)と低濃度人工炭酸水足浴(以下,炭酸水浴)を行い,両者に有意差があるか検討した.実験結果では足浴のみを行い,全身の体温上昇,足部と離れた僧帽筋上部の皮膚温度の上昇がみられた.これは,足浴の温熱刺激で全身に熱放散反応が生じることで,皮膚血管拡張に伴った皮膚血流量増加がおこる.よって足浴のみでも全身に温浴効果が得られることが示唆された.また,先行研究にて浸水部で炭酸ガス(以下,CO)にてBohr効果が得られるとの報告もあり,それが全身に波及する可能性についても検討した.結果として,Bohr効果は非浸水部の皮膚には波及しないと推測した.

key words:足浴,温浴効果,皮膚温度

 

着地動作の落下期における下肢の筋活動について
~台高の違いによる検討~

本研究の目的は,異なる台高からの着地動作において,落下期の下肢の筋活動(Preactivation:以下PA)量を計測し衝撃緩衝に重要な筋を明らかにすることである.対象は健常成人男性10名とし,使用機器は床反力計,表面筋電図,高さの異なる台(20cm40cm60cm)を用いた.筋電図の導出筋は,利き脚の内側広筋(VM),大腿二頭筋長頭(BF),前頚骨筋(TA),腓腹筋外側頭(GL)の計4筋とし,各筋のPAピーク値(%MVC)を測定した.その結果,GL3条件の間すべてにおいて,台高が高くなるに従いPA量が有意に増加した.また,VM20cmから60cmの間でPA量が有意に増加した.これらの結果から,跳び立つ台高とPA量の変化の関係には,中枢神経系の運動制御プログラムが関与していると考えられた.また,PA変化量に有意差が認められたGLVMは,着地動作における重要な衝撃緩衝筋であると示唆された.

key words:着地動作,PA,運動制御,衝撃緩衝筋

 

粟生田ゼミ

 

体幹・下肢の柔軟性と筋持久力が腰痛症に及ぼす影響

本研究の目的は,体幹と下肢の柔軟性と筋持久力と腰痛症の発症の関連について検討することである.現在腰痛を呈している大学生12名と腰痛の既往のない大学生12名を対象に,アンケート調査と整形外科疾患検査を実施し,アンケートによる診断名と運動歴・現在の運動実施の有無についての調査,また整形外科疾患検査により筋柔軟性,筋持久力と腰痛症との関連について検討した.その結果,腰痛群では体幹回旋角度が有意に低下していた.他の柔軟性テストと筋持久力テストにおいて,有意な差は認められなかった.また日常生活において体幹・下肢の柔軟性低下や筋持久力低下により不良姿勢が生じ,腰痛発症の一因になると考えられた.今回の結果から腰痛の発症要因は明らかにならなかったが,腰痛と体幹回旋角度の関連が示唆された.

key words:腰痛,柔軟性,筋持久力

 

身体障害者のスポーツにおける理学療法士の必要性

身体障害者のスポーツの現状を把握し,理学療法士の必要性を調べるためアンケート調査を行った.対象者は新潟市内でスポーツ活動を行っている身体障害者34名とした.その結果,新潟市内でのスポーツ活動における問題点や身体・心理・社会環境などの面に理学療法士(Physical Therapist,以下PT)が介入していく必要があると示唆され,またPT・身体障害者のスポーツの相互理解が不十分であるため,PTとしての役割を発揮しきれていないことが示唆された.PTは身体障害者のスポーツに対し,障害者の社会参加・復帰に向けて専門的な知識や技術を活かしアプローチすることが必要であると考えられる.今後の課題として,対象者数を増やし調査を継続すること,また身体障害者のスポーツに対するPTの意識調査を行い今回の調査結果と合わせて考察していく必要がある.

key words:身体障害者,スポーツ,理学療法士

 

投球動作とシャドウピッチングの比較
~肩関節回旋角度に着目して~

投球動作のトレーニング方法としてシャドウピッチングがある.本研究の目的は,投球動作とシャドウピッチングの肩関節回旋角度を比較することで,シャドウピッチングが投球フォームチェック,投球障害後の競技復帰へのトレーニングに有効であるかを野球経験者男性6名を対象とし,三次元動作解析装置を用いて検証した.その結果,シャドウピッチングは投球動作に比べ,肩関節回旋角度の可動範囲が狭く,肩関節内外旋角加速度では外旋方向への変化が有意に小さかった.よって,シャドウピッチングは投球動作よりも肩関節に加わるストレスが小さいことが示唆された.投球障害後の競技復帰に向けて行なうトレーニング方法としてシャドウピッチングは効果的であると考えた.

key words:シャドウピッチング,肩関節回旋角度,投球障害

 

肩外旋運動時の肩周囲筋の筋活動
~エアーフリッパー・セラバンド・ダンベルの比較~

本研究の目的は,エアーフリッパー・セラバンド・ダンベルを用い,肩外旋運動の速度を変化させたうえで筋活動量を比較・検討し,臨床での肩の腱板機能訓練に役立てることである.肩痛の既往のない健常若年者6名を対象とし,肩外旋運動時の棘下筋と三角筋後部線維の筋活動量を比較した.測定方法は立位,肩関節内外旋中間位から合図に伴い,45度外旋運動を毎分60回,80回,100回の速度で10回実施し,安定した5回分の平均積分値を求めた.その結果,棘下筋の筋活動量の割合はセラバンドがすべての速度で高い値を示した.また,エアーフリッパーはすべての速度で棘下筋に対する三角筋後部線維の割合が低い値を示した.しかし,速度間での有意差はみられなかった.以上より,エアーフリッパーはセラバンド・ダンベルよりも三角筋後部線維の活動を抑えた状態で,棘下筋の筋活動を向上させることが可能であることが考えられた.速度に関しては今後検討を要する.

key words:肩の腱板機能訓練,肩外旋運動,棘下筋,三角筋後部線維

 

インステップキックの動作解析
~体幹回旋に着目して~

サッカーのインステップキックにおいて,体幹回旋が,蹴り脚の膝関節伸展角速度(スイング速度)にどのような影響を与えボールスピードが変化するかを検討した.対象は若年健常男性5名とした.三次元動作解析装置,床反力計,スピードガンを用いてボールスピード,右膝関節伸展,体幹回旋の角度,角速度の経時的変化を検証した.その結果,右膝関節伸展角速度とボールスピードには正の相関関係が認められ,最大体幹左回旋角度からインパクトまでの回旋角度変化(以下,⊿体幹回旋角度)と最大体幹左回旋角速度(以下,最大左回旋角速度)の間にも高い正の相関関係が認められた.助走角度別にみると,助走角度0°と30°および45°でのボールスピードは大きな差がみられたが,30°と45°はほぼ同値を示し,右膝関節伸展角速度も同様の結果となった.助走角度が増えるにつれ,⊿体幹回旋角度,最大左回旋角速度ともに増加した.以上のことから,⊿体幹回旋角度の増加や最大左回旋角速度は右膝関節伸展角速度の増加へ大きく関与せず,助走角度を大きくすることで,体の傾斜角度が増加し,インパクトに有利となるのではないかと推察された.

key words:インステップキック,体幹回旋,ボールスピード

 

靴下の違いが閉眼片脚立位時に足部に及ぼす影響
5本指ソックスに着目して~

本研究の目的は,閉眼片脚立位時の左側足底全体,前足部の足圧をF-scanを用いて計測し,靴下の種類によって閉眼片脚立位時間,接触面積,接触圧力,外側への荷重中心の軌跡にどのような違いがでるのかを調べ,各靴下装着時を比較し,検討することで靴下と5本指ソックスどのような違いがあるのかを足圧分布によって明らかにすることである.健常成人女性8名を対象とし,裸足,靴下,5本指ソックスの3条件で閉眼片脚立位時間と足圧分布を計測した.足圧分布は,前足部と足底全体における接触面積,接触圧力,足底全体の外側への荷重中心の軌跡を算出し比較した.その結果,足底全体での接触面積において裸足に対して5本指ソックスが有意に大きな値を示した(p0.05).今回の結果より5本指ソックスを装着した場合,足趾間に隙間ができ接触面積が拡大し,小趾側への荷重を促しやすくなることにより閉眼片脚立位時間が延長したと考えられた.

key words5本指ソックス,足圧分布,閉眼片脚